『村に火をつけ、白痴になれ』 栗原 康 著 岩波書店2016☆☆☆☆高
大杉栄とともに関東大震災の直後に憲兵隊によって獄中虐殺された女性伊藤野枝の伝記の様な本です。面白かったです。大杉栄がアナーキストでありながら(だからこそ)怖いストイックな人ではなく、奔放で女性にも優しい?人であったのは以前に読んだ本で知っていましたが、その大杉がある意味惚れ込んだ女性として描かれています。
実際の手紙など当時の文章を、筆者が勝手に現代風に訳して?書き直している部分が、野枝の思想を分かりやすくしています。同時に、著者のその書き方が、「学生が書いたのか?」と思わせるほど、思い入れが強く幼い感じがするのですが、漢字を敢えて使っていない事も含めて、そこが著者の作戦なのかもしれません。
そういう面で、伝記としてはとても不思議な書き方をしています。でも、大杉と野枝の姿が、いくつか挿入されている当時の写真も含めて、とてもリアルに実感できます。ひょっとすると凄い著者なのかもしれません。